温泉でチュー


 負けず嫌いなコックはおれと同じ時間帯に風呂を使うことを嫌がる。
湯中りしやすい性質なのに、つい張り合って長風呂してしまうからだそうだ。
 しかし今回の目的は湯治であったので流石のコックも性根を据えたようだ。
 水滴を弾く瑞々しい肌がほんのり桜色に上気した頃、おれはそっとコックの項に手を伸ばし、濡れた金髪の先っちょを摘まんでやった。

「……なんだよ」
「伸びたな」

 ふと思いついたままを言うとコックの顔は更に赤みを増し、

「二年も経ちゃあそれなりに」

と口をもごもごさせている。
 無駄に照れやすいのは相変わらずだと思いながら、つい、と細っこい首筋を撫であげてみた。

「なんだよ」
「なんでも?」

 ことさら平坦な声を出す割りに、おれの悪戯を咎める瞳は期待交じりに青を濃くする。
無駄に感じやすいのも変わらないようだった。
 揶揄うだけのつもりでいたがコックの色めいた視線を受けておれもなにやら腰のあたりがむずむずしてきた。
こいつのスカした顔を両手で挟み込んで、不服そうに尖らせた嘴に今すぐ噛みついてやりたい。
 横目で船長の様子を窺うと、悪魔の実の能力者はコック以上に長湯に弱く、風呂桶の縁にもたれるようにしてぐんにゃりへばっていた。

「……おい、やめろ」
「こんなに美味そうなのに?」
「ばっ……」

カ、と続いた台詞はおれの咥内へ直接落とし込ませた。
 湯船に伸ばされていた足が器用に曲がり、抗議するようにおれの膝をげしげしと蹴ってくる。
襟足に添えていた掌に力を籠めた時点で自分から瞼を降ろしたくせに、全くもってコイツは素直じゃねェ。
 おれは二年で、こういうコックを素直に「可愛い」と思える程度にはオトナになったってのに。
 熱いくらいの湯温に比べればコックの口の中はぬるいくらいで、しかし久しぶりの口付けで体の中心はどんどん熱を集めていった。

(まずいな)

 ここらで止めておかないと、流石にまずい。
 抗う素振りを見せてはいても基本的に快楽にはひたすら従順なコックであるからして、その気にさせてしまえばなんだかんだでうまいことやれるだろうが、終ったと同時に悪魔風ナントカで適温を熱湯に変えるくらいのことは平気でやる男なのだ。
 例の奇妙な漂流者との戦いを間近に控えた今、戦闘員二名がいきなりリタイアするわけにはいかないだろう。

(……まあ、こんくれェはご愛嬌だ)

 ゆらゆら揺れる水面の下で形を変え始めたコックのものを捕まえるかわり、おれは薄いコックの舌を自分のそれで捕らえ、無理やり絡みつかせた。
 柔らかい舌先から体内へと続く付け根まで、届く限りを気の済むまで嬲ってやる。
伏せた長い睫毛の下がきらりと光るのは垂らした前髪から滴り落ちた水滴ではなく、コックの体液だろう。
 実は涙もろいコックは性的に感じすぎた時も涙を零す癖がある。
地道に攻撃し続けていた形のいい爪先はいつの間にやらするりと撫でる動きに替わっていて、おれは

(ちょろいな)

と目の端を細めた。
 仕上げとばかりにコックの舌を引きこんで、じゅっと音が立つくらいきつく吸い上げてやれば、グル眉の下でゆるりと開いた碧眼は思った通りの涙目で。

「どーしてくれんだよこれ……」

 全身を真っ赤に染め上げたコックは湯中りここに極まれりで、ルフィ以上にぐんにゃりと脱力している。
しかし一部分はとんでもなく元気だったので、おれは手桶に突っ込んでいたタオルを手早くコックの腰に巻いてやった。
 ついでにコック同様、いやサイズ的にはコックの1.5倍程度に成長した自分の腰まわりにも巻きつける。
 因みに湯にタオルを浸すのは銭湯での作法的にたいそうよろしくない。
マナーとやらに煩いコックはションボリ眉尻を下げて「覚えてろ」と恨みがましく囁いたが、驚いたことに「続きは後で」と付け足してきやがった。
 ついでとばかりに耳朶をぺろりとやるあたり、エロコックのエロ度合はおれの知り得ぬ二年間で相当上がったようである。
 少々でなくしてやられた気分で、おれは早急の尋問決行を誓った。



 

おわり。


(2013/01/02)

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