秘密 /ゾロ


ロロノア・ゾロには、人に言えぬ秘密がある。

とは言ってもそれは、彼自身に纏わるシークレットではなく、彼の天敵とも言うべき金髪青年、G・M号で最も頻繁に拳やらカタナやら足やらを付き合わせる男―――お料理担当戦闘員、コックであるサンジの『秘密』。
 思い出すだけで、考えるだけで吐き気を催す、最低最悪なトップシークレットだ。








「…でよう、俺ァそんとき、ジジイに言ったわけ、『剥き終わったジャガイモの皮をご丁寧にとっといてどうすんだよ!』って」
「………」
「したら、ジジイは真面目くさった顔して、『捨ててイイ食材なんざねェってことを、テメェの軽い脳味噌に叩き込んでやる』って、いきなり義足でハイキックだぜェ。そりゃもうビビるっつうの」

何がおかしいのかサンジはゲラゲラと笑い出した。それからまた、ゾロにはいまいち理解不能な昔語りを続ける。
 酔いの回ったサンジの白い頬はいつもよりもかなり赤く染まり、目元は潤んで少々涙目と言えないこともない。つまりは非常にだらしない顔をしている。

「んでもよォ、『だからどうしろっつうの』ってフツー思うじゃん?イキナリ蹴っ飛ばされて悔しかったけど、そん頃の俺じゃどう足掻いてもあのクソジジイに一矢報いる、なんつう真似は無理なわけ。だから俺は―――オイ」

聞いてるかクソマリモ、と問いかけられ、ゾロは不承不承といった体で

「聞いている」

と答えた。相槌を返さないとまた絡まれるのは必至だからだ。
 返事に満足したようでサンジがにっこりと微笑んだ。そしてまたべらべらと呂律の廻らない口調でなにやら喋り続ける。








 同い年だというコックがこの船に乗り込んで以来、ゾロほど彼からの迷惑を被った人間はいないだろう。
 このサンジという男、女に対しては言うに及ばず、男であったとしても基本的に誰に対しても優しい人間だ、とゾロは常々思っている。
 ゾロには信じられないことだが、相手が敵であったとしても空腹を訴える限りサンジの優しさは無限大に発揮されるのだ。
 それはゾロの目には時に甘さだとも映ったが、己の身を挺しても何かを守ろうとするサンジの姿は、己の野望以外興味のないゾロにして「なかなかの男だ」と思わしめた。つまりは概ね好印象だったのだ。
 そのくせどうしたことか、ゾロにだけはやたらと突っかかる。
鍛錬をしていれば「ウゼエ」と蹴り飛ばされ、昼寝をしていれば「邪魔だ」と蹴り上げられ、酒を飲んでいれば「ゴクツブシの癖に偉そうだ」と酒瓶を取り上げられる。当然ゾロは怒りのままに報復攻撃を加え、狭い甲板で仲間同士大喧嘩する日々。
 鍛錬と昼寝と酒にしか興味のないゾロにとって、それら全てを邪魔してくるサンジはまさに天敵だったのだ―――今までは。

「ジジイが、皮をどうすんのか見てやろうと思ってさ、わかんねーように横目でずっと追ってたワケよ、ジジイの手元をよ。したら、芋の皮だけじゃなくて、 キュウリだとか、トマトの種とか、みんな一緒くたにして袋に放り込んでるじゃんか。『んだよ、結局捨てんじゃねーの』って思ったら違ったんだなこれが!」

ぐびり、と無言でグラスを呷るゾロに対して、息が掛かるくらいの近さまで身を乗り出して熱心に話しかけるサンジには、昼間のコックが自分に向ける険相が一切見られない。
 むしろ、親友にでも話しかけるような―――というよりもそれは、もっと親密な関係の人間に語りかけるときのそれのような―――態度で、普段との余りのギャップにゾロとしては腰が落ち着かなくてしょうがない。
 しかし酔っ払いに文句を言うのも大人気ないと、ゾロとしては最大限の努力をもってして、サンジに付き合って飲んでいるのが今の現状だ。








 こうして二人きり、夜のラウンジで飲むようになったのはつい最近だ。チョッパーが船に乗り込んでからだから、かれこれ一ヶ月にはなるだろう。
 サンジが幾ら酒瓶を隠しても、ルフィが食材を荒らすが如く、ゾロはその剣士の勘?でもってそれを発見し、コックの努力を尻目に結局はガバガバと飲み尽くしてしまう。
 とうとうキレたサンジはある夜「テメェにだけ飲ませて溜まるか俺も飲む!」と宣言し、気持ちよく呑むゾロに「注げ」とコップを突き出してきた。いつのまにかそれが習慣になり、気がつけば二人で杯を重ねている。
 一緒に飲むようになって気がついたことだが、このコック、態度はでかいくせにどうも酒に弱いらしい。
 いつもは食事中のワインくらいしか口にしていない彼は、ゾロが飲むようなキツめの安い地酒や彼のとっときである米の酒を口にすると、見る間に顔中を赤くして、体中の骨を抜かれたようにふにゃふにゃになってしまうのだ。
 酔ったコックは普段の目つきの悪さを顰めて、やたらと笑い転げる気さくな男へと早変わりする。そして饒舌になったかと思うと一転して黙り込み、終始良く泣き、良く喚き、良く絡む。
 所謂『酒乱』。全く持って迷惑な話である。

「捨てるかと思いきや、よく洗ったそいつらをさ、夜中に大鍋でグツグツ煮てるワケよ。俺ァもうびっくりして、隠れてるのも忘れてコンロに走ってったら、ジジイがスゲーイイ顔で笑ってやがんの。…そんで初めて解ったんだ、ジジイのスープの材料が」

その時の事を思い出してでもいるのか、サンジが嬉しそうに目を細める。
 器用に包丁を扱う白い指先がテーブルの上をするりと滑り、投げ出されていたゾロの指に絡められた。

(…今日は早いな)

口にグラスを当てたままそっと嘆息するゾロには気付かず、サンジは手慰みにゾロの無骨な指を弄ぶ。

「ジジイはさあ、誰よりも料理ってモンを愛してんだ。俺ァそんなジジイがすごくすごく好きで―――」

普段なら絶対に口にしないような言葉を連ねるコックは、確かにひどく酔っ払っているのだろう。因みに今サンジが一生懸命に話す「ジジイとのハートフルなエピソード」を聞くのはもう三回目だ。

「…あれ。俺、なんでジジイんとこ出てきたんだっけ…?」
「―――『オールブルー』を、見つけるためだろ」

ああそうだった!とサンジはガタン、と椅子を蹴倒して立ち上がった。
 ゾロの指はしっかり掴んだままである。

「そうだよオールブルー!世界中の海で泳ぐ魚がひとつところに集まる、スゲエ場所なんだぜオールブルーは…俺はいつかそれを見つけて」

絡められたままだった指先が、そのまますいっと持ち上げられてサンジの口元に運ばれた。
 両手でシッカリ握ってずりずりと頬擦りしたあとサンジはやたら赤い舌先を出して、ぺろりとそれを舐める。

「そんで、世界中の魚を―――テメェらに、食わせてやるんだ」

うっとりと微笑む青年の瞳が真夜中の猫のように煌いたと思った瞬間、ゾロは腰掛けた椅子から無理矢理引き摺りだされ、あっという間にコックの下敷きになった… いや正確には、押し倒された。
 ちゃぷちゃぷとゾロの指先を舐め続けていた舌はそのまま太い腕を這い首筋を辿り、やがて唇に落とされる。

「…ん、開けろって」

生暖かいサンジの舌が閉じられたゾロの唇をつん、と突付き、ゾロは僅かに口を開いてそれを受け入れた。








 サンジが一体どういうつもりでこういうコトをするようになったのか。
それは剣豪には未だに大きな謎のひとつだ。
そして甘んじてそれを受け入れている自分も。








 柔らかく生暖かい侵入者に自分の舌を絡めてやると、馬乗り状態の痩身が僅かにびくん、と揺らいだ。
 金色の髪の毛に片手を突っ込んでサンジが逃げられないようにがっちり固定し、それから図々しく潜り込んできたお仕置きをしてやる。
 ゾロはもっと深い口づけを求めて蠢く舌先を、上下の歯を合わせてがちん、と捕まえた。
やられっぱなしは性に合わない。一瞬引きかけるソレを甘噛みしながらじゅっと吸い上げると、唇をくっつけたままサンジがん、ん、と鼻を鳴らす。

(…下手に喘がれるより、ずっとキやがる)

熱烈なキスを思うさま貪り、ハァハァお互い息が上がったところで、上に乗っかったコックが身を離した。
 それから自分のネクタイに手を掛けてそれを解きしゅるりと抜き取ると、唇を離してニヤリと笑う。

「おいロロノア。俺は今タイヘンに気分がいい」
「そりゃ良かったな」
「だから付き合えよ。―――抜いてやるぜ?」

淫猥に微笑むサンジに、いつものアホっぽくふてぶてしい女好きの姿は見られない。
 青年はゾロに跨ったまま鼻歌でも歌う調子でさっさとジャケットを脱ぎ、自らシャツのボタンを外していく。
 日に当てないせいか真っ白なままの肌に薄桃色の乳首が浮いて、男の裸だというのにイヤらしい事この上なかった。
『男』になど―――本来はこれっぽっちも興味のないゾロが、迂闊にも欲情してしまうほどにそれは扇情的な光景。
 憮然とした面持ちで自分を見つめるゾロになど興味のない顔をしてばっと豪快にシャツを脱ぎ捨てたサンジは、少しずり下がるとそのまま身を屈めて男の股間に顔を埋めた。
 やたら赤い舌を出してぺろりと自分の上唇を舐めると、ニヤリと笑ってゾロのズボンのチャックを咥える。
 チーッ…と音を立てて、ゆっくり口でそれを降ろした。








 サンジは多分、色情狂(インフォマニア)、とかいう病気なのだろうとゾロは思っている。それも酔ったとき限定の。
 でなければ男の、それも昼間あれだけ喧嘩三昧の自分相手にこんな真似をするわけがない。
 仲間に股を開く最低の淫買野郎―――だが驚くべきことに、朝になれば自分がやったことやられたこと、キレイさっぱり忘れてしまうのだ。
 初めて彼を抱いた、その翌朝。
夜が明けて目覚めたサンジは、ちょっと前までさんざんしがみついていたゾロを思い切り蹴り飛ばしてさらりと一言。

『おいゾロ、二本目空けたくらいから記憶がねェんだけど、俺ゲロった?』

まるきり普段と変わりない調子で言われた時はさすがにショックだった。
 あのときほど間抜けな顔をしたことはなかった、とゾロは歯噛みする。

 ヤり癖のある、手のつけられない酒乱―――それがサンジの秘密だ。








 下着の上から、形をなぞるように舐め上げられた。
それから先端を舌先でほじるようにねちっこく責められて、ゾロは思わずぐ、と喉の奥で唸った。
サンジは顔を上げて「へへ」と嬉しそうに微笑う。

「なんか、沁みてきた…ぜ」
「じれってェんだよ。どうせなら直接咥えろエロコック」

やれやれと大仰に肩を竦めたサンジは、

「マリモはせっかちでいけねェや…もっとこう、ムードとかそういうモンを解せ?」
「アホか。お前相手に処理すんのにンなもんが必要な訳があるかよ」

傲然と言い捨てると「それもそーだ」とサンジは笑ってひょいと顔を伏せた。
 今度はちゃんと手を使って下着からゾロの肉茎を取り出し、躊躇わずに濡れた唇を寄せていく。
ふ、と直接息を吹き掛けられて、ゾロは不覚にも唾を飲み込んだ。









 サンジの口の中は最高にイイ。
それに普段煙草を咥えてばかりのそこが、煙草の替わりに男の性器を咥えている情景は眩暈がするくらい淫靡だと思う。己のものであれば尚更だ。
 暖かくて湿った口中にゾロの先端が包まれ、隠されて見えぬ舌先がその中で踊る。唇をすぼめて先走りを吸い上げ、舐め尽そうとするサンジに煽られて、ゾロの身に湧いた衝動はどんどん加速した。
 次第に質量を増すそれ全てを口に含むのは辛いようで、サンジはしきりに「ん、ん、」と鼻から息を抜く。低い男の声すらも既に煽る要因にしかならぬ。

(こいつの金髪を引っ張り上げて)

されるがままに横たわり、好き勝手に急所を弄らせながらゾロは思う。

(嫌がるアタマを無理矢理押さえつけて、喉の奥ンとこまで突っ込んで)

サンジの唇が上下に棹を滑るタイミングが早まった。

(そんでいつもの生意気で、可愛げのクソもない取り澄ましたツラにぶっかけたら、スゲエイイんだろうな)

それかもしくは―――そう考えながらゾロは己の股間で揺れるサンジの金糸に手を伸ばして、ぐいっと引っ張った。
 もう少しで果てかけたそれから口を放されたサンジが、不満気に眉を顰める。
唾液やらなにやら解らない液体が透明な糸となって、その薄い唇とゾロの陰茎を結んだ。

「…もういい。突っ込んでやるからさっさとケツ出せ」
「っは!ひでえ言われようだぜ」

くしゃっと哂うその顔がどこか卑屈に見えて、ゾロはうんざりしながら青年を退けた。
サンジは乱暴な扱いにも頓着せず、さっさと己の前を寛げてその中に両手を差し込んだ。そしてゾロに背中を向けて、膝立ちで腕を動かす。
 見ているゾロの方が情けなくなった。

(冗談じゃねぇ)

なし崩しにこういう関係になってしまった今となっては、口に出すことも行動する必要もないだろうが。
 ゾロはサンジに、かなり前からこういうことがしたかった。
口汚く自分を罵るコックを押さえつけて、服を剥ぎ取って、体中に噛み付いて、白くて長い足を限界まで押し広げて、最奥に突き込んでみたかった。
 けれどそれは、いつものアホで乱暴で足癖が悪くて女好きでやたら強くて、そのくせとても優しいあの男に対してであって。
 こんなだらしのない人間相手に思ったわけではない。

(こいつは、酔うと誰にでもこうなんのか)

ゾロへの奉仕をやめたサンジは今、ズボンを膝まで下げおろした格好で己の陰茎を扱いている。

「おい、こっち向け」

命令されたとおりに振り向いたサンジは器用に瞳を固く閉じたままだ。
 擦り上げるだけのどこか早急なその動きは、快楽を追うというには余りにもぞんざいで、ゾロは嫌悪感に眉を寄せる。
 サンジにとって普通の射精は通過点にしか過ぎないらしい。

(ナカに挿れられねェと、感じないようになってやがんのかもな)

頬が赤く染まっているのは、酒のせいで。
 ゾロの前で手淫することに対しての羞恥は一切見られない。

「ッふ、あ、あ、」

洩れた雫を掬い伸ばしてくちゃくちゃ言わせていた指先がくっと先端に潜り込んで、尿道をくにくに弄り出した。
 根元を握る手の甲の筋が、指に合わせてさかんに動く。

「―――ッン、ア、はッ…!」

半裸の痩身がぶるぶるっと震えて、硬直して、やがてサンジはぺたり、と床に腰を降ろした。
 ハァハァ荒く息をつきながら吐き出したものを自ら後ろに塗り込める。


ぐち、

くちゅ、

じゅる。

淫猥な水音を男を受け入れる為に広げた指が立てた。

「最低だな、お前」

ゾロがその姿から目をそらすように吐き捨てると、サンジはようやくうっすらその蒼い眼を開いた。

「俺に見られてもなんともねぇのか」
「―――チンコビンビンにおっ勃てて言うセリフじゃねェよなァゾロ?」

サンジは後ろをほぐすのをやめて、ついっと精液に濡れた手の平をゾロのそれに伸ばした。
 ほれみろ、とサンジがまた哂う。
ぎゅっと握られて感じる自分の熱にこそ、ゾロはうんざりした。








 右手を床、左手をゾロの分身に添えて、全裸になったサンジがゆっくりとその細い腰を落としていく。
 先端がぐ、と押され、次いでくぷっと襞の内側に埋まりこんだ。

「…ふッ…っく、」

狭い場所を潜り抜ける部分がぎゅっと絞り込まれてすごくイイ。

「く…ッ」
「クソ、ふ、太ェ…ぁ、はい、入ってく…う…ッ!」

いつのまにかサンジの両手はゾロの腹筋を掴むように腹の上に揃えられている。
 懸命に力を抜いて、己の体重で目的を果たそうとする青年の顔は苦しそうに歪められて、とても快楽を追っているようには見えない。
 サンジ任せの挿入はじれったくてしょうがないが、ゾロはまるで慣れぬ小娘のように震えるサンジを見るのは好きだった。
 けれどその姿はとてつもなく淫らで、闇雲にゾロを煽る。

(―――ヤってることは、娼婦と一緒だ)

やがて根元まできっちりとその身に納めたサンジが、自分を凝視するゾロにニヤリと笑った。
 キツい入り口を抜け柔らかく熱い肉にくるまれたペニスを痺れるような快感が襲う。

「…ッハハ。テメェのデケェの、全部喰っちまった」
「………」
「なぁ、動いていいか。それとも、テメェが働く?」

小首をかしげてとろんとした目つき。
 最低の淫売に咥えこまれた縁がきゅっ、と締まって、ゾロの血液が一気に沸騰した。








 どうしようもない。
アタマは必死にこれはいつものあのコックじゃないと訴えているのに。
カラダは正直すぎるほどの反応を示す。
 サンジの中に突っ込んでぐちゃぐちゃに掻き回したいと主張するのだ。







(―――畜生!) 

だからゾロはいつも途中で考えるのをやめる。
 ちっと舌打ちし、サンジに突っ込んだままその躰を引き倒して、白い両足を肩に乗せた。
なすがままに足を預ける男を蔑むように見下ろし、

「変態野郎が」

猛る分身をギリギリまで引き抜いて、思い切り奥まで突きこんだ。
 狭くて熱くて柔らかくて最高にイイ。

「―――!痛ッ…」
「ヘェ。痛ェのかよ」
「ったりめー…だ、う…ク、ソゾロ…痛ェ…っての…!」

乱暴な動きにショックで仰け反る痩身をきつく抱きしめて、ぎゅうぎゅう締め付けてくるサンジの内壁を擦る動きを繰り返す。
 根元まで埋めた状態で腰を左右に揺すると、金髪頭が同じように左右に振れた。

「だったら嬉しそうにヒクヒクさせてんじゃねェ。吸い付いて来てんだろ」
「ハァ、あ、だって気持ち、イ…、からッ、ンッ」

ズボンから陰茎だけを取り出した状態で全裸のサンジへの抽挿は、モロに犯しているカンジがして余計に興奮した。
 サンジの骨ばった指がゾロの髪の毛に挿し込まれ、もっともっととゾロを引き寄せる。
 短く息をつく白い喉元に噛み付きたくなる衝動を、ゾロは無理矢理ハラの中に押し込んだ。


(こいつとヤりてぇな)

(酒でパーになった時とかじゃなくて)

(ちゃんと『俺』に股を開かせて)

(そんで、俺だけのもんにしてぇ)

甘いものが混じり始めたサンジの喘ぎがどこか遠くで聞こえる。
 むちゃくちゃに腰を動かしながら、ゾロはぼんやりそう思った。








 ロロノア・ゾロには、人に言えぬ秘密がある。
この色情狂が朝になればすべて忘れるのを口実に、夜毎薄汚い自分の欲望を満足させていること―――そんな卑怯な真似をしているなんてことは。
 口が裂けても言えない。

  

 (2009/02/20)

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