□SNOW DANCE



しましま

 

「ん…」

…まぶたが重たい。目を開けられない。
頭にもやがかかったようで、思考がまとまらない。
必死で考える。

(ここは、どこだ…?)
(おれは、なにをしていた…?)

はっきり分かるのは、背中がすっげー暖かけえことだけだ。
そして、すっげー気持ち良い。
この温もりだけ感じて、眠れたら…
思考が止まりかける。

(イヤ、駄目だ。)

何かが頭の中で警報を鳴らす。
流されてはだ駄目だ。長年鍛えぬいたおれの勘がそう叫ぶ。

俺はサンジ、海賊船ゴーイング・メリー号のコックだ。
船はクルー一人ひとりの夢を乗せて、グランドラインを行く。
ここ数日は、グランドラインにしては珍しく穏やかな風と波が続き、そして船は暖かな気候の春島に到着した…はずだった。

ログが溜まるまで、見張りを残して自由時間が与えられた。
おれも気分転換にと、散歩がてら山菜でも採ろうと船を降りたのだ。

夕方、やけに冷え込むなと思ったんだ。
そして、日が落ちると、いきなり強い風が吹き、吹雪となった。
さすがグランドライン。たった数十分で春から真冬だ。
いそいでメリー号に戻ろうとして…

(……?)

そこからの記憶が無い。
思い出そうとすると、頭が痛む。
そこで、回想を止め、現状を把握することにした。
なんとか気だるい身体を動かそうとする。
もぞもぞしていると、いきなりすぐ耳元で低い声がした。

「オイ。」

聞き覚えのある声だ。というより、毎日聞いてる。
しかし、この声がこんな近くで聞こえるというのは…?
ありえない現状が理解できずにいると、

「オイ。」

もう一度声がした。
重いまぶたを無理やりこじ開ける。
見慣れない部屋だ。小屋の中といったところか。
お世辞にも上等とはいえない部屋の中、暖炉の火が燃えて辺りを照らしている。暖炉の横には椅子があり、服が掛けてあった。

しっかし汚ねえ小屋だな。
床にはうっすら埃が積もって、紙くずなんかも落ちている。
ゆっくり視線を下に落とすと、おれの身体は毛布にくるまれていた。

「……?」

違和感を感じる。
何だ、何がおかしい…?

「オイ、いい加減起きろ。」

その瞬間、やっとおれの五感が目を覚ました。
椅子に掛けてある服はおれのだ。
おれは服を着ていない。素っ裸で毛布にくるまっている。
いや、くるめられている。
そして、おれの後ろにもう一人。
感触からいって、こいつも裸だ。おれを抱きかかえるようにして座り、おれの身体ごと毛布にくるまっている。
背中が暖かくてて当然だ。こいつの体温、直に背中に受けてんだから。

「な…な…」

現状がわかってさらに混乱してしまった。

(何をどうしたら、こういう事になるんだ?! しかも、何でコイツ?!)

俺は、祈るような気持ちで首だけを動かして後ろを振り向く。
予想通りの顔がそこにあった。

緑色の髪、凶悪な目つき。

「な…な…」

そして、過去こんな大声を出したことがあったかというくらいの大声で叫んだ。

「なにしてんだ、テメエェェェェェェ!!!!!」

そのまま立ち上がり、殺人キック炸裂…のはずが、ゾロの奴がおれが身動きできないよう、おれを抱く腕の力を強めてきた。

「まあ、待て。落ち着け。」
「はあ?!何をどうしたらこの状況で落ち着けるんだ!!テメエふざけんな、離せ!!!」

おれは腕を振り外そうと足掻くが、ゾロの身体はビクともしない。

「まあ、おれの話を聞け。おれたちは、遭難したんだ。」
「はあぁぁぁ?!」









ゾロの話を要約すると、こうだ。

ゾロが見張りに残って船で昼寝をしていると、俺を残す他のクルー達が慌てて戻ってきたらしい。
ナミさんがこの島の気候の異常に気付き、近くにいた仲間を呼び寄せて急ぎ船に戻ったそうだ。
戻ってすぐ、雪が降り出し吹雪になった。
そこで、一人足りないことに気付く。

「…?
 オイ、それで何でお前がここにいる?」

見張りに残っていたなら船にいたはずだろう。

「いや、お前が帰って来ねえからよ。…帰れずにいるんじゃねえかと…」

ゾロがいつになく歯切れの悪い言い方をするのが気になる。
それよりも、迎えがなんでコイツなんだ?

「なんで迎えがお前なんだ?お前じゃ帰れるもんも帰れなくなりそうじゃねえか。」

きっとナミさんあたりがおれを心配して迎えをよこしてくれたんだろうが、こいつの方向音痴は筋金入りだ。おれを見つけるどころか、行方不明者が増えるだけのような気が…

「いや…、その…」

はっきりしねえなあ!!
そんな態度、海賊狩りのゾロがとっていいはずないだろう。

「なんだよ?はっきり言えよ気持ち悪い。
 で、この状況はなんでだ?」
「この状況?」
「この状況っつったら、この状況だ!
 な、なんで、おれたちはその、…は、は、」
「お前こそはっきり言え。」

なんでコイツはこんなにふてぶてしいんだ。

「口にするのもためらう状況だからだろ!
 なんでおれたち裸で抱き合ってんだよ?!」

畜生、言わせんなよ!再認識しちまったじゃねえか!!

「ああ、船を降りてお前を探してたら、雪に半分埋まって気を失ってるお前を見つけた。お前かついで船にかえろうとしたんだが…」
「…帰れなくなったんだろう?」
「そういうことだ。」

やっぱりな。呆れてことばも出ねえよ。

「お前をかついで途方にくれてたら、この小屋を見つけたんだ。風が防げればと思ったんだが、暖炉があったのはラッキーだった。服は、雪で濡れてビショビショだったから脱がせた。あれをそのまま着てたら間違いなく凍傷になってたぞ。」

なんとなく理解できてきた。よく見れば椅子に掛けた服からはポタポタと雫が垂れている。
裸で抱き合うのが一番暖かいというのも、聞いたことあるしな。
普段喧嘩ばかりでも、仲間であるおれを助けようと、コイツなりに頑張ってくれてたらしい。
…にしても、コレはないだろう。

「わかった。助けてくれたことには礼を言う。サンキューな。」

意識が戻れば抱き合ってまで暖めてもらうまでもない。
暖炉には火も入っているのだ。
立ち上がってその腕から逃れようとしたのだが、腕はかたく閉じられて開こうとしない。

「オイ…?」

おれは振り返り、至近距離で睨みを効かせる。
悪いが、おれは男に抱きすくめられて喜ぶような人間ではない。

「…….」

ゾロは何も言わず、おれの目を見つめ返してきた。
その目にいつもの凶悪な光は、今はない。
それどころか、まるで愛しいものでも見つめるような優しい色をしている。

「…っ!!」

おれは胸の奥がざわりと騒ぐのを感じて、慌てて視線を外した。
胸の動機が早くなるのを感じる。

(何なんだ、コレは…!!)

後ろからおれを抱く腕に、力が入ったのが分かった。
強く強く、おれを抱きしめる。
……そして…

おれの尻の辺りに、何か当たっている。
これは…?

思いつくものが、一つある。
いや、しかしな。まさか…

「オイ…?」

おれは恐る恐る聞いてみた。

「おれの尻に、なんか当たってるんだけどよ…?」
「…ああ、悪い。」

何が?
何が悪いんだ?!
誰か嘘だと言ってくれえ!!!

「まさか、まさかだとは思うけどよ…」

ゾロはあっさりと認めやがった。

「悪い、お前に興奮してんだ。」
「なにいぃぃぃぃぃ?!!!!!!」

本日二度目の大声だ。
蹴り飛ばしてやりたいのに、身動きが取れない。

「お前なぁ、あんまり大声出すなよ。雪崩がおきたらどうすんだ。」

そうそう、おれ一度雪崩に飲み込まれてよ…って、そんな話じゃねえ!
おれに、この野獣ゾロが、興奮してる…?
あまりの事実に、パニック寸前だ。

「こんなこと、バラすつもりもなかったんだがな。さすがに好きな奴が裸で俺の腕の中にいるかと思うと…」

ゾロが、おれを、好き…?

「実は、お前が気を失ってる間、お前の寝顔見ながら1回抜いた。」
「は…?」

それじゃ、あの紙くずは?

「もっぺん、いいか?」
「はあ?!」

言い終わらないうちに身体をずらすと、右手だけでおれのからだを抱きすくめ、左手で自分のモノを抜き始めた。
なんだ、コイツは凶器か?!なんでこんなにデカイんだ!!

「オイ、ちょっ、ちょっと待て!!」

ジタバタ暴れるおれを、いとも容易く片手で押さえつけ、ゾロの息は早くも上がってきた。
ゾロの目が、おれを見つめてきた。
こんな顔は見たことがない。まるで金縛りにでもあったかのように、身体が動かなくなってしまった。

普段、剣以外のことにはなんの執着も見せないコイツに性欲があるのか疑問に思うほどだったのに、この現状はどうだ。
そして、明らかに自分がズリネタにされているというのに、その男の表情から目が離せないでいるおれも、どっか狂ってきているらしい。

精悍な顔だ。と思う。
その顔つきも、考え方も、生き方も、どれをとってもストイックだ。
密かに憧れていたことは認めよう。
おれが夢を追うことをためらっている間も、コイツはただひたすらに夢を追い続けていた。
男として、一つのことを追い求める姿は、まぶしく思うこともあった。それを認めたくなくて、わざと悪態をついたりもした。

そんな男が、今、おれの目の前で欲望に顔を歪めている。
額に浮かぶ汗さえも、とんでもなくエロティックだ。

ゾロはおれの目を見ながら、射精した。

乱れた息を整えてから、ゆっくり口を開く。
おれはまだ目が離せない。

「言っとくが、おれはホモじゃない。」

おれはゾロの口がことばを紡ぐのを、黙って見つめ続けた。

「お前だからだ。なんでお前なのか、おれにも分からねえ。が、お前が女どもにヘラヘラしてんのを見ると腹が立つ。おれを見ろ、と叫びたくなるのを、いつも必死で抑えてた。おれは、お前が好きだ。」

マジで言ってんのか…?

「だが、お前に気持ちを押し付けるつもりはねえ。一生黙っていようと思ってたぐらいだからな。お前が女が好きなのは、よく分かっている。普段喧嘩ばかりのおれが、お前に好かれようというのが無理な願いだってのも。」

それじゃ、方向音痴のお前が、帰ってこない俺を追って出たのは…

「お前に何かあったんじゃないかと思うと、心配で身体が勝手に走り出してた。気を失ってるお前を見つけたときは生きた心地がしなかったぜ。まあ、お前にしてみりゃ、余計なお世話だったんだろうがな。」

この男は…
おれの身体から力が抜けていくのがわかる。

「悪かったな、気持ち悪いだろう?できればおれとしては、今までどおりメリー号の仲間でいたいんだが…」
「それは、無理だな。」

はっきり言ってやる。

「そりゃそうだ。お前がイヤだと言うなら、おれが船を降りる。今まで、ありがとな。」

そう言うと、ゾロはやっとおれを解放して立ち上がり、毛布をおれの身体に巻きつけた。
今まで感じていたゾロの体温が離れて、やけに不安な気持ちになった。

「ちょっと待て。」

歩き出そうとしたゾロの腕をつかむ。

「いくつか質問がある。」

ゾロは困ったように微笑むとその場に座り込んだ。
おれはその隣に移動して座り、毛布をゾロの肩にも掛けてやる。

「オイ、」

何か言いかけたゾロのことばを、おれはさえぎった。

「お前、おれが好きなのか?」
「…ああ。」
「冗談じゃなく?」

ゾロが、ちょっと拗ねたように答えた。

「冗談でこんなこと言えるか。」

おれはゾロの顔を覗き込む。
ゾロは困惑して目をそらした。

「じゃあさ、なんでヤっちゃわなかったんだ?」

「ヤっちゃ…って、おまえ!!」

「好きな奴が裸で寝てて、よく手ぇ出さなかったよな。」

そうなんだ。この状況で、よくおれは無事でいられたもんだ。

「だから、おれの気持ちをお前に押し付けるつもりはないっつったろ。おれの欲望で、お前を傷つけるわけにはいかんだろーが!」

幾分ぶっきらぼうに答えたゾロに、おれは内心舌を巻く。

(何なんだ、コイツのこの義理堅さと忍耐強さは。)

「テメエのおれへの深い愛はよーく分かった。」

おれはゾロの真正面に座りなおすと、ことばを続けた。

「ヤろうぜ、ゾロ。」

ゾロの両目が大きく開かれる。

「お前…、意味分かって言ってんのか…?」

その目が欲望に光りだすのを、おれは見逃さない。

「おれは女の子が大好きだ。それは今までもこれからも変わらねえ。だが、お前に好きだと言われて、ズリネタにされて目の前で抜かれても、気持ち悪いとは思わなかった。おれがお前を好きなのかどうか、悪いがそれは正直分からねえ。でもよ、お前に憧れてたのは事実だ。お前が船を降りていなくなるなんて考えられねえ。お前に好きだと言われて、お前になら抱かれてもいいと思った。今まで通りじゃいられないってのは、そういう意味だ。それじゃ、駄目か?」

おれは、ゾロの告白を聞きながら思ったことを全部一気にまくし立てた。
今朝起きた時には、コイツはただの気に入らない喧嘩相手だったのにな。男とセックスするなんて、考えたこともなかったのに。

「テメエが自分でしてる顔、強烈にエロかったぜ…」

ニヤリと笑って見せる。
ゾロは乾いた声で搾り出すように言った。

「いいのか…?」
「それはおれのセリフだ。お前、男抱けるのかよ」
「馬鹿言うな。今見てただろうが。」

言いながらおれの身体に手を伸ばしてきた。
届くか届かないかのところでその手が止まる。

「テメエの義理堅さはよくわかったから。」

その手を取ると、半ば強引に引き寄せた。
ゾロの目が変わる。完全に野獣のそれだ。

(そうそう、そんな面してろ。)

野獣はおれの身体を強く抱き閉めると、深く口づけてきた。
貪るようなそのキスに、必死で応える。
何度も角度を変えては長いキスを繰り返す野獣に、さすがに息が続かなくなってくる。

「オイオイ、窒息死させる気かよ。」

押しかかる体重を押し返しながら笑いながら言ってやると、ゾロは平然と言ってのけた。

「ずっと我慢してたんだ。これぐらいテメエも我慢しろ。」

ああ、そうだな。このおれの魅惑的な身体を指くわえて見てるだけだったんだからな。

「なんでテメエはそんなにエロイんだ…」

すぐ耳元で囁かれ、背筋がゾクゾクする。
耳に舌を捻じ込まれ、身体が震えた。

「あっ…」

自分でも驚くほどの甘い声が出て、恐る恐るゾロの表情を確認する。
引かれたりしたらどうしよう。

ゾロもまた驚いた顔でおれを見ていた。

(やっぱり男を抱くなんて気持ち悪いとか考えてんのか…?)

不安な気持ちでゾロを見つめ続けていると、ふっとゾロの口元が緩んだ。

「その声は凶器だな。すげえ腰にクる。」

そう言って首筋にキスの嵐を降らせた。

ゾロのごつごつした手がおれの身体を撫でまわり、熱い舌がおれの肌を這う。
中心を触られてはいないのに、身体のどこを触られてもそこに響いて、痛いくらいだ。
声を抑えようとして口を結んでも、どうしても鼻から甘い息が漏れてしまう。

「オイ、声出せよ。」
「ばっ…か…言うな…っ」

だが、おれのそんな努力もむなしく、ゾロの指が胸の突起に触れた瞬間高い声が上がってしまった。

「ああっ…」
「そう、それだ。」

野獣が目の光をますます凶悪なものにして、羞恥に赤くなるおれの目を見ながらゆっくり顔をおれの胸に近づける。

「くっ…あっ、ああっ…」

片手で片方の乳首を弄びながら、片方の乳首に舌を這わせる。
歯を立てられたり、吸われたりするともう堪んねえ。

「あんっ、ああっ…」

断続的に上がる声を抑えきれず、目の縁には涙が溜まる。
中心は張り詰めていて、限界を訴えている。

空いていたもう片方の手を、ゾロが下に伸ばしてきた。
そっと触られただけで、どうしようもなく感じてしまう。
必死に堪えるおれの表情を満足気に見つめて、ゾロはおれのそれをためらいもなく口に含んだ。

「おいっ、やめ…っ」

咄嗟に止めようとしたおれだが、身体に力が入らない。
湧き上がる快感に逆らえない。

「あああっ、…っ、やっ、やめ…、き…たね…か…」

ことばが続かない。
下から見上げながらゾロが言う。

「汚くねえよ。テメエは黙って感じてろ。」

ゾロの口の中は熱く、些細な舌の動きも敏感に感じ取ってしまう。

「ああああっ!」

ゾロに強く吸われ、あっけなくおれは果てた。

「はあ、はあ、…」

肩で息をしながら、ゾロを見る。
ゾロの喉が大きく動いた。

「おい、テメエまさか…?!」
「ああ、呑んだ。」
「なっ、何してんだ!!」
「初めて味わったな。あんまり旨いもんじゃねえが、お前のだと思うと、それだけで甘く感じる。」

なに恥ずいこと言ってんだ、こいつは!!

「これで終わりだと思うなよ。」

ゾロがまだ息の整わないおれに手を伸ばしてきた。
ああ、わかってる。ここからが本番だ。

「わかってるって。おれが天国に連れてってやるよ。」

と、言いつつも、男同士の経験なんて無い。
噂では聞いたことはあるが、本当に入るのか…?
おれは、おそるおそるゾロのそれを見る。

デカイ…

これが、おれの中に…?

そんなことを考えていると、ゾロがおれを引き寄せ、自分のひざの上に座らせた。
背丈は変わらないので、おれが上から見下ろす形になる。
頭の中でグルグル回る不安を悟られないように、わざと乱暴に唇を重ねてやった。

ゾロの手が尻に伸びる。

指が入り込んできた瞬間、物凄い違和感がおれを襲った。
キスを深くする。キスに溺れて、それ以外の感覚を全部麻痺させてしまおうとした。

後ろに入る指が増える。
片方の手は前を抜き始めた。
ざわざわしたものが背筋を走る。
キスに集中しようとするが、それを許してくれない。

(畜生…!)

堪らず、おれは口を離した。
途端に、断続的に上がる声が止められない。

「あ、ああ、あああっ…」

おれのあまりの乱れように、ゾロが少し目を丸くするが、執拗に責める指を緩めてはくれなかった。

「お前、最高…」

ゾロのかすれた声さえ、おれを昂ぶらせる。

「だっ、駄目…、もう…っ」

限界が近いことを伝えると、ゾロは指を引き抜いた。
そしておれを仰向けに寝かせると、おれの両足を肩に担いだ。

(すっげえ格好…)

自分のみっともない格好を思い浮かべて自嘲していると、ゾロが切羽詰った声で囁く。

「何、笑ってんだ…」

コイツ、余裕無えんでやんの。
ま、おれもそうだけどよ。

「挿れるぞ…」

その声に、また身体が震えた。

好きかどうかわからないなんて、よく言えたものだ。
こんなに、今はこの男が愛しい。
コイツになら、何されてもいいや。

さっきまで指で弄ばれていた部分に、熱い塊が当てがわれる。
おれは覚悟を決めて目を閉じた。

「ああああああっ!!」

ゾロのモノがおれの中に入ってくる。
それは想像を超えた痛みだったが、同時に何故か安堵感がおれの中に芽生えていた。















ゾロは、サンジを背負って小屋を出た。

夕べはまるで夢のような一夜だった。
サンジはゾロに貫かれながら、ゾロの名を呼び続けた。
その濡れた声に興奮して、さらに激しくサンジの身体を揺さぶった。
サンジは必死で悟られまいとしていたが、相当痛かったはずだ。
終わったあと、サンジの秘部は血で滲んでいた。
それでも、明らかに演技ではない喘ぎ声が最後には聞こえてきて、ゾロが果てると同時に、サンジも果てた。

「次は、おれがお前を天国に連れて行ってやる。」

そう告げたゾロに、口の端だけ上げてサンジは答えた。

「おれは今、そこから還ってきたところだぜ?」





雪は止んで、暖かな光が差し始めた。この雪もすぐに溶けてなくなるだろう。

サンジは眠ったままだ。頑丈な男だが、慣れないことをしてさすがに堪えたのだろう。

背中にサンジの重さを感じる。
それがまるで自分を信頼して身を預けてくれているような気がして、たまらなく愛しかった。


その数時間後目を覚ましたサンジに、海岸とはかけ離れた山中をさ迷っていたのをゾロが激しく罵倒されたのは、言うまでもない。





END




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