サンジ10才 2





 サンジはゾロ君と知り合ってから、3回たん生日を迎えていましたが、実はこれまで『ゾロ君がサンジにプレゼントをくれる』なんてことはありませんでした。
 おめでとう、の言葉だけでなによりもうれしくなるくらい、サンジはゾロ君を大事なおともだちだと(毎日けんかしてはいても)思ってはいたのですが。
 だからゾロ君が、

「たん生日だから、特別だ」

真っ直ぐにサンジを見つめて告げた言葉に、さからえるわけもないのです。





 (なんなんだよ)と思いながら案内した、おうちのおくのバスルーム。ぱたんと背中の後ろでドアが閉まると、すぐにゾロ君は真顔で「ズボンを下ろせ」と言ってきました。

「ハァ?」
「今日はお前のたん生日だから」

サッパリ意味がわかりません。

(マリモの国じゃたん生日にズボンを下ろすしゅうかんでもあるってのか)

 ぐるまゆをよせてただ首をかしげるサンジにじれたのか、ゾロ君はちっとしたうちしながらサンジの半ズボンに手をかけて、その場にすっとしゃがみこみました。

「うわっ!な、なにしやがるクソマリモ!」
「うるせぇ。お前も男なら覚悟を決めやがれ」

真っ白なパンツごと一気にズボンを下まで引きずり下ろされたサンジはひょえーとその場に飛び上がりましたが、足首にからんだ衣類がじゃまをして、得意のキックをお見まいすることもままなりません。
 いきおいがついてこてん、とおしりからひっくり返ってしまったサンジのかた足をひょいと持ち上げたゾロ君は、そのままするりとはいているものを取り去りました。
 それから自分の着ている長そでのシャツをひじまでめくり上げて、「おし、入れ」なんてバスに向けてくいっとあごをしゃくります。

「か、かくご」
「そのまんまじゃいやなんだろ」

ちらりと投げられたし線の先には、ゾロ君いわくのかわいらしい、サンジの白っぽいおちんちんが。

「おれがせきにんもって、ちゃんと」

 こんなにしんけんなゾロ君の顔を、これまで一度だってサンジは見たことがありません。
 ごくっとつばを飲みこんだ音が、せまいだつ衣所に反きょうしてやたら大きくサンジの耳にとどきました。






 男の子同士だから。
たとえば体育のプールじゅ業とかで、サンジだって他の子のそれを目にすることはあるし、ぎゃくだってもちろんありました。
 何のいん果かゾロ君とは今まで同じクラスにはなったことがないけれど、それこそ今日みたいに、たまたまトイレでとなり合ったりしたら、し界のはしっこにおさめたりすることだってあるわけで。
 だから別にはずかしい事じゃない―――こんなに近くで、まじまじと見つめられても。
 そうは思うのに、サンジの心ぞうはばっくばっくとこわいくらい身のうちで鳴るのです。

「ちっとぬらしてた方がやりやすいんだ」
「ふ、ふーん」

 自分のけい験からでしょうか、下だけすっぽんぽんになったサンジのこ間に、ゾロ君は最初にぱしゃーっとシャワーを当てました。
 ひやっとする大きな浴そうのふちにこしかけるように言われ、それから大きく足を広げさせられて、いまサンジの白い両足の真ん中には、ゾロ君の緑色のつんつんした頭がひょこんと出ています。
 ゾロ君の目線は真っ直ぐサンジのそこだけに向けられていて、何だか目のやり場にこまってしまったサンジは、仕方なくそこらを見わたしました。
 はりめぐらされたタイルのあいだの、ついこないだまで真っ白だったコーキングの部分が、すみっこのほうから少しずつ黒っぽくなってきています。

(夏が来るまえに、ここも大そうじしなきゃ)

二人っきりで一しょにくらしているおじいちゃんはとてもいそがしい人だから、お家のおそうじなんかはみんなサンジの仕事なのです。
 ふとそっちに気を取られたサンジは、ほんのわずかの間、目の前にすわりこんでいるゾロ君のことをわすれました。
―――それと同時に。

「いっ…いででででで!」

いきなり固い指先につままれた先っちょが、びりびりっ!と電気を走らせたみたいにいたんで、サンジは思わずこしを浮かせましたが、

「動くな、やりづれぇ!」

けれど矢を射るようにきびしいゾロ君の声がして、サンジはひくっと一度だけのどを鳴らして動きを止めてしまいます。
 なだめるようにそっとうでをつかまれて、元通りにすわらされ、

「…じっとしてねぇと、たぶん、よ計いてぇから」

サンジとしせんを合わせないようにしながらぼそぼそっとゾロ君はそういうと、だまって作業を開始しました。
 こわいくらい真けんな顔を、サンジの小さな、先っちょのほうだけ赤く染まってしまったそこによせて。
 しげきを受けてちょっと元気になったサンジの根元を左手で軽く引っぱっているゾロ君が、右手の指先にだけ、ぎりぎりの力を入れているのがサンジにはわかりました。
 なぜならば、全然ふさがってない大きなかさぶたを無理矢理はがすみたいにぴりっぴりっといたむのに合わせてふるえるサンジのひざ小ぞうと同じように、ゾロ君の上がった右ひじも小さくふるえていたからです。
 サンジのむき出しになった足は同じ年ごろの子ども達にくらべたらかなり色白でしたが、日に当てることのないそこいらはより白く、ゾロ君のかっ色に焼けた指はとても目立ちます。当然その動きは、なみだでうるみかけたサンジにもよく見えました。
 おしっこの出る穴とそれへ続く、ちょこっと出っぱった部分に見えていたうすい線みたいだったところが少しだけさけるように開いてあらわれた、口の中みたいに真っ赤な所と、まだふさがっている所へと少しずつずれていくゾロ君の、自分と同じくらい小さな指。
サンジのほにゃっとした指で触るのとはまた違う感触を、とんでもなくじんじんするその場所に覚えるのは、多分ゾロ君が毎日練習しているけん道のせいでしょう。
何度も何度もまめをつぶしたゾロ君は、いつもたく山のバンドエイドをその手のあちこちにはり付けていて―――ふっとそれを思い出したサンジは、

(こいつに)

こんなことさせちゃダメだろ、と思いました。

「も、いい」
「あ?まだ全然だ、ちこっとガマン」
「いいって言ってんだろ!」

 サンジはすうっと息をすいこむと、持って生まれたじゅうなんせいを発きして上半身を思い切り折り曲げ、ごちん!とゾロ君の頭のてっぺんに自分のおでこをぶつけました。

「いてっ!…て、てめぇイキナリ何しやが」

思わずちんちんから手をはなして己ののう天をさすったゾロ君の目に、サンジがこ間を両手でおさえてうーうーうなるすがたが映りました。

「…おい?」

いぶかしげな声で問いかけられたけれど、返事をすべきサンジはいたさをこらえるのにせい一ぱいで、大じょう夫だと首をふることも出来ません。
なるだけいたくないようにとゆっくりゆっくり下ろしてやっていたゾロ君でしたが、げきとつのショックでつい本気の力をこめてしまったらしく、サンジの包皮、とよばれる部分は一気にずるりとむかれてしまったのでした。
 ぎゅっと閉じたまぶたのうらがちかちか光って、頭がしんの方からガンガンします。それよりもっといたいのは当然、生まれて初めて外に出たばかりの―――

「っふ、ふえ」
「んのバカまゆげ!おさえてねぇで見せろっ」
「や、だ、だめだいてぇ」

どうやらヤバイことになったらしいと感じたゾロ君は、いやがってあばれ始めたサンジの手首をつかんでそこから引きはがし、

(うわっ)

と上がりかけた声をぐっとのみこみました。
 小さくて(…)白くてとてもかわいかったサンジのそこは、真っ赤にはれてどうにもいたいたしい様相をていしています。
そればかりからんぼうにむいてしまった部分からはかすかですが血がにじんでいて、ゾロ君はあわててシャワーでそこを流しましたが、びん感なきず口にこれがまた大そうしみたらしく、サンジは「ぎゃーっ!」と情けないひめいを上げてしまいました。
 男の子にとっては大変デリケートな場所ですから、けんかで出来たけがなんかとはまるで種類の違う、ガマンしたくてもガマンのしようがないいたさなのです。
お湯で流したばかりのそこからは、またじんわりと赤いものがしみてきて。
半泣きのサンジと止まらない出血をみとめたゾロ君が、ついきず口へと唇を寄せてしまったのは、本のうのなせるワザでしたが。
 ありえない場所にぺろりとはわされたしたにおどろいて、いたみも忘れて思いっきりお友達の顔面にひざをうめこんだのもまた、サンジの本のうのなせるワザだったかも知れません。





 それからお風ろ場でいつも通りのとっくみあいにとつ入したサンジとゾロ君です。まあそこはそれまだまだお子様でしたので、と中からはまるっきり水遊びへとい行して、頭から足のつま先までびしょぬれになってしまった二人は、ついでとばかりにいっしょにお風ろまですませました。
 そして今。
ぬれてしまった自分の服の代わりにサンジのお着がえを借りたゾロ君は、そのままこの家にきた最初にこわもてのおじさんからご案内されたリビングで、これまたぱりっとしたお洋服に着がえをすませたサンジとはす向かいに、見たこともないようなごち走にありついています。

「あーもう、きったねぇ食い方すんじゃねぇ!ボロボロこぼしやがって。それ、おれのお気に入りのシャツなんだからな、ソースなんかつけるんじゃねーぞ」

だったらこんなかたっ苦しいもんよこすな、とサンジに言われるまま小さいネクタイまで着けさせられていたゾロ君はちょっと文句を言いたくなりましたが、呆れたような口ぶりでゾロ君のマナーいはんを注意するサンジが、それはそれはうれしそうにニコニコしているので。
だまって、もぐもぐと口を動かし続けました。

「うめぇだろ?」

あらたなお皿に手をのばすたびにくり返されるしつもんに、こくこくとうなずき返しながら。
ちなみにその日の帰りぎわ、テーブルマナーはさておき一ぱん的な礼ぎ作法は道場仕ごみだったゾロ君は、ちゃんと「ごちそうさま」を言った後、やっぱり毎年のように、

「たん生日おめでとう」

と、お約束の一言をサンジにプレゼントしてくれたそうです。
 その日の夜、当初の予定通りゾロ君との「たん生会」を終えたサンジは、ご機げんな気分でベッドに入りました。
大事なおたからをかわいらしいとひょうされてムカつきもしたけれど、そのせいでけんかになったゾロ君とは今日もちゃんと仲直り出来たようだし、なんだかんだで無事にだっ皮もすませたしで、まあ結果オーライな一日だったと言えるのではないでしょうか。
 だ足ながらその後一週間ばかりサンジのおちんちんはひりひりといたみつづけ、「てめぇのせいだ!」と逆ギレしたサンジは毎日ゾロ君に八つ当たりしまくったそうですが、それもまた仲の良いしょうこと言えるでしょう。






 十年後。
かつてゾロ君と自分の『形』のちがいについて悩んでいたサンジは、現在サイズの点でひそかになやむ日々をすごしていますが、変わらずデリカシーのないこい人は、

「色も大きさもおれ好みで丁度いいぞ」

なんて聞くだけで赤面してしまうような発言をくり返しては、サンジからようしゃのないせいさいをくらっているご様子です。
 めでたしめでたし。



END

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 (2005.05.20)

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