リクエスト 6 |
6 挿入しやすいようサンジのシャツを上げれるだけ捲り上げると、真っ白な背中が露になった。 滑らかなそれを確かめるように手を這わせたゾロは、指先にひっかかった何かに思わず眉を顰める。 見た目以上に丈夫に出来ているサンジである。他の部分には目立った傷は見えないものの、これは流石に消えずに残ったようだ。 背中全体に無残にも散った、引き攣れたピンク色の術痕。 ドラムの雪山でナミを庇ってついた傷だ。 (コイツは、本当に) 腕っ節が強いだけでなく、心まで強い。 最初に彼を認めたのは魚人との戦いだった。何かを命がけで守ろうとするだけの強さ―――それこそをゾロは、トモダチとなるべき人間に求めていたのかもしれない。 愛しさをこめてゆっくりとその傷跡に唇を寄せた。 「…ッ!」 まだ完全に治癒したとはいえない部分は他の場所よりも敏感なのか、抵抗もせずに抱きすくめられたままの痩身がビクリと震える。 そんな反応にも煽られて、ゾロは青年の背中を舌先で愛撫しながら、己の屹立したものを目的の場所あたりに擦りつけた。 そこは本来そういう用途に使われる部位ではないが、他に突っ込むところもないし、娼婦の中にはそっちを使わせる者もいると聞いたことがある。 だからゾロもここはひとつ先達に習いサンジの後孔に思いの丈を注ぎたいのだが。 (入らねぇ…?) 先走りの力を借りて押し入ろうとするも、つるつると滑って上手くいかない。 そうこうするうちにサンジが何やらもじもじと動き始めた。 ヤベエ正気に返ったか、とゾロは焦る。焦りながらも滑らかな肌を舐め続け、 (…そうか!) あちこちしゃぶっているうちに大変いいことを思いついた。 警戒されないようにゆっくりゆっくりと舌を這わす位置を下方にずらしていく。 胴に回していた腕をそろりと外し、上半身ごと便器の蓋にもたれるようにくったりと伸ばされたサンジの両肩にそっと添えた。 逃亡防止である。 (要は、濡れねぇからダメなんだろ) ストレートにそう解釈した男は、秘所に唾液を含ませるべく躊躇わずきゅっと閉じられた場所に舌先をねじ込んだ。 「も…っ、もう、」 「まだだ」 「嫌だ、嫌だゾロ…ッ」 「まだ、だ」 キッパリと言い切った台詞に、サンジの哀願はまさにバッサリ袈裟懸けだ。 こんな場所でこんな格好でなんで俺はトモダチにケツを弄られなきゃいけねェの、しかもベロやら指やら挿れられちゃってんの。 ザラリと大きな舌で舐められて突付かれて、うぎゃあと盛大に暴れだそうとした体は肩を押さえられてあっさりと自由を奪われた。 自慢の武器である両足だって膝の裏に体重を掛けられてしまえば、つま先をじたばたさせるくらいしか出来やしない。 いい加減にしろ、とキレて振り向いたところで「傷つけたくねぇ」と真顔で言われ、動けなくなった。 それから長い、長い時間、舌だけであやされている。 恥ずかしい、擽ったい、気持ち悪い、ワケが解らない、そんな気持ちはとっくに吹っ飛んだ。 それくらい時間をかけて、ゾロはサンジをほぐそうと努力し続けたのだ。 ぐちゃぐちゃになった頭に自分自身の上げる短い喘ぎ声が響きだした頃には、ゾロによって拘束されていた腕は解放されていて、なのに自分は男を押しのけることもせず、目の前の水タンクにしがみついて腰を高々と上げている。 頬に当たる陶器の感触が冷たい。 でもサンジの両腕の自由と同じく自由になったゾロの両手、それに前と後ろをさんざん悪戯されて火照った青年の体にはその冷たさが心地よかった。 「…あ、っく…ッン!」 根元まですっぽり埋められた指が、ナカでぐりぐりと蠢いた。 何本入っているかなんて考えたくもないサンジは、こうなったらとっととホンバンに突入してくれと、恥も外聞もなく何度もゾロに頼んでいる。 しかしトモダチは真面目腐った声で「こんなもんじゃだめだ」と返してはまた熱心に開発に戻っていく。 サンジのオツムは既にユルユルだったが、後ろのほうはそう簡単には行かないらしい。 異物感どころか弄られる感覚すらなくなってきているというのに、ゾロはしつこく、ねちっこい作業をやめようとはしない。 (なんなんだよ、なんで俺は) どうして動けなくなってしまうのか。 ひどいことをされている自覚はある。 蹴り上げて振り払う自信だってある。 手酷く拒絶することだって出来たはずだ。 ―――これじゃセックスフレンドだろ、とゾロを罵ることも。 こんな扱いをされたくて、テメェのリクエストを聞いた訳じゃないと。 だけど、とサンジは考える。 だけどゾロが、あの無骨で気の利かない男が、まるで大事な、 (―――愛しいものを見るような眼で俺を) これまでトモダチのいなかったサンジに確信はなかったが、あれは多分、トモダチを見るものよりもずっと熱い視線だったように思う。 それに気付いてしまったから、サンジは動けなくなったのだ。 ゾロのトクベツになったような気がして―――とてもとても、嬉しかったから。 やがて指の替わりにもっと質量のあるものを押し付けられても、やっぱりサンジは動けないまま、抵抗のかわりにぎゅっと己の拳を握り締めた。 ようやくの思いで侵入を果たしたそこは、ゾロがこれまで経験した中で一番狭くて、刺激的だった。 指を掛けて十分開けるようになるまでさんざんに馴らしたのに、先端を含ませてみると引きちぎられるかと思うほど締め付けられる。 ねじ込むようにしながらなんとか中ほどまで進むことが出来たがそこから先へ進めない。 「―――いっ…」 「…く…ッ!」 痛いくらいキツい、とはこのことだ。 ゾロは大きく息を吐いて、せり上がってくる射精感をなんとか堪えた。 薄い肉の下を走る、すっと伸びた背骨のライン。張りのあるなだらかな双丘、その中心で薄紅の襞を掻き分けるように埋められているのは自分の男の証。 これほど扇情的な光景をゾロは見たことがない。 煽られすぎて眼が眩んだ。 ゾロの形に広げられて絡みつくのは体内と呼ぶに相応しい熱さ、ひくひくと蠢く腸壁にくるまれた部分に絶えず与えられるハンパじゃない快感。 しかし挿入されたサンジには相当な負担がかかっているのだろう。 眼下で全身をがくがくと痙攣させる青年の薄桃に色づいていた白い肌は、一気に血色を失い見る影もなく青褪めている。 ゾロの顔が苦しげに歪められた。 苦痛を与えたくて体を重ねたいと思ったわけではないのだ。 「そんなに痛ェ、か?」 「ったり前だアホ…ッ…平気なわけねーだろ…!」 俺はゴム人間じゃねーんだ、と吐き捨てるように呟かれた言葉に、ゾロは細い腰を掴んでいた腕から力を抜いた。 脂汗の浮かんだ背中を背骨に沿わせるようにしてゆっくりと撫でてやる。 ふーっ、ふーっと大きく深呼吸を繰り返すサンジは、どうにかして痛みをやり過ごそうと必死だった。 すぐにでも抽挿をはじめたかったが、相手がこの調子では流石に萎えてしまいそうだ。 さてどうしたもんか、と考えあぐねていたゾロだが、 「ただでさえ、デケェ、んだから…、ちったァ無理を考え…ッア!」 喋り続けるサンジの腹筋に刺激されたか、意図せずにぐんと中で質量が増した。 「て、テッメェ…!」 「おお、悪ィ」 「もう俺ァ…!」 勘弁しねェぶっ殺す、とばかりに蒼い瞳を潤ませて振り仰いだサンジの顔は、怒りと羞恥でそれはもう真っ赤に染まっていたが、己に覆い被さるゾロを認めた途端目が点になる。 ゾロが年相応に―――頬を赤らめる、そんなところを見るのは初めてだったので。 (か) かわいい。 (ななななんだその面ァ…!テメェそれでもイーストの魔獣かよ!) 呆れ返って言葉も出ない。 無理矢理に収められたところは変わらずにひどい痛みを訴えて続けている。 トモダチを連呼しながらこんな振る舞いに及んだ男にも呆れたが、それ以上に。 このかわいい男を思い切り甘やかしてやりたいと思ってしまった自分にこそ、一番呆れまくっていた。 突然サンジは「うがああ!」と長めの金糸に自分の両手を突っ込んでかき回し、 「も、どーにでも、なれ、だ」 「あ?」 「さっさと動けっつってんだよ!」 やけっぱちになって命令。その剣幕におされるようにゾロは律動を開始した。 5分も経たずにサンジは自分の発言を後悔したが、文字通り後の祭り。 我慢に我慢を重ねていたゾロはそれまでの遠慮がちな態度はどこ吹く風の勢いで青年を責め立て、サンジは余りの激しさに逃げを打つ体をぎゅうっと抱き締めらながら最奥まで穿たれ、中でそのまま男の精を受け止めた。 想像以上の出来事にサンジは本気で泣いたが、それが余計にゾロを煽ったらしく。 「今度はちゃんとお前もイカせてやる」 一度果ててそれなりに余裕の出来た男は、満足して萎えて然るべきものを抜きもせずに再び腰を使い始めた。 若いトモダチ同士の初めての交わりは、明け方ようやくサンジが後ろでの交合に慣れて、とうとう自らも白濁した液体を噴き上げるまで辛抱強く続けられたらしい。 こうしてゾロは誕生日に、リクエスト通り念願のトモダチを手に入れた。 相手は理想的なことに同い年の男、サーヴィス精神も豊かなコックさんだ。 剣士が同日、それ以上のものを手に入れたと気付くのは、また別の話。 おわり |
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(2003.12.01) |
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