HERO 5





 ほぼ一目惚れの状態でサンジに引っ掛かったゾロだ。
しかしそれはサンジに対する過分な思い込みに寄る所が大きかった。
 誤った情報に他愛無く釣られたゾロは、会ったその日に無理矢理サンジとカラダを繋げ、後に謝罪に赴いた際、初めて二人には過去にも接点があったことを知って。
 今現在ちゃっかり恋人のイスを手に入れることが出来たのは、偶然が重なった上の僥倖にしか過ぎない。
 最初の印象はどこへやら、淫乱どころかサンジは何も知らなかった。
ゾロから与えられる快楽に翻弄される自分を恥じてすらいたのだ。
 ホンモノのサンジは思ったよりも純情で、思ったよりも粗暴で、思ったよりもずっと。

(コイツはほんとに、なんでこんなに)

 サンジがゾロに向けた満開の笑顔は、自主的に男のモノを咥えこみ、あまつさえ口内射精までさせたとは思えないほど邪気がなく、言い添えるならば色気の欠片もありはしなかった。
 けれどそんなサンジだからこそ、より想いが募る気がする。
昨日よりも今日、それからきっと今日よりも明日。
 彼の内側の、ゾロの知らない新しいところを発見するたびに、もっともっとと愛しさが募っていく。

(―――野郎の癖に可愛すぎんだろ…ッ)

 らしくない積極性が自分の誕生日を祝うためのスペシャルサービスだと解って、モトから絶倫気味なゾロが盛り上がらないわけもなく。
 一仕事終えて満足げな表情を浮かべたサンジをがばっと掻き抱いて、ころんと隣のベッドに転がしたゾロが、達したばかりとは思えぬ回復力でもって戦列復帰を果たしていたのは言うまでもないことだ。











「うわっ…む、むーっ」

 ころんとひっくり返されて目を剥いたサンジに馬乗りになって、ぱかっと開いた唇を塞ぐ。
一瞬だけ身を縮めた青年は、けれど抗うことなく自らもゾロのそれにそろりと舌を絡めてきた。
 洗い立てのさらりとした金糸に指を差し込んで撫でてやるゾロに下から両腕を伸ばして、ぎゅうっと抱きついてくる。

「―――ん」

 どこもかしこも弱いサンジはキスにも弱くて、うっとり閉じた瞼の端にすぐ涙を滲ませてしまう。
 薄目を開けて観察するゾロは、こんなんじゃ一生オンナは相手に出来ねェだろうなあと、口蓋を舌先で煽るようにつつきながらつい考えてしまうのだが、女は勿論のこと当然ほかの野郎にだって譲る気は毛頭ないのだから丁度いい。
 コレがどうしようもなく可愛い、なんてことは己だけが知っていたらいいのだし、それに多分、サンジがこんなに可愛くなるのは自分に対してだけだ。
 なんて図々しくも偉そうな述懐を抱きながら、ゾロはサンジのもっとかわいらしーところを拝もうとトレーナーの内側へもぞもぞ手のひらを忍ばせた。
 けれど大人しくキスに夢中になっていたはずの相手は途端にじたばたともがき始め、

「アホ、抜いたばっかだろ!」

顔を背けてゾロを嗜めるが、これはどーも照れ隠しの一種だとゾロは即座に判断する。
 一息ついて今頃羞恥心が湧いてきたのだろう。
青い目がきょろきょろ泳いでいるし頬が赤い。
 ゾロはニッと唇の端を上げ、

「アホはどっちだ。ンなもんで足りるかよ」
「わっ」
「今すぐ弄らねェと気が狂う」
「や、メ、メシの支度も出来てっから!」
「後でいいつったろ」

喋りながらさっさとサンジのトレーナーを引っぺがした。
それから下穿きにも手を伸ばして、指先が掠めた感触に「お」と声を出す。

「勃ってんじゃねェか」
「………」
「俺の咥えて、興奮しちまったのか?」

 底意地の悪い質問はどうやら図星だったようで、「んん?」と返事を促すとサンジの顔はさらに赤く染まって、ネジの切れた人形の如くぴたりと動きを止めた。
 あっさり抵抗を封じたゾロはイイ気分でさかさかと彼の全てを脱がし、自らも半端に身に着けていた衣類を取り去って再びサンジに跨り、白い裸身をしげしげと見下ろしてやる。
 遠慮杓子もない視姦にサンジは悔しそうにぎゅっと唇を引き結んだが、そこは誕生日効果なのか暴れるつもりはなさそうで、そんな彼の態度は調子づいたゾロを増長させるのには十分以上。

(マジでヤベェ。こいつ、…どうしてくれようか)

 かわいさ余ってなんとやら、うっかり魔獣モードに入ったゾロである。
閉じた両膝を強引に開いて立てさせてからちゃっかりその間に入り込み、徐に恋人の手を取って、彼の指先をその後孔へと導いた。

「!」
「今日は全部―――してくれンだよな」

 ぎょっと目を見開いたのに構わず、引きかける指を上から押さえてぐにぐにと未だ固い部分を揉み解してやる。
 ロロノア・ゾロのケモノ染みた視力は先ほど風呂場でサンジが推定5センチの掘削作業に取り組んでいたのをバッチリ捕捉していたが、彼の言う通り『拡げるのは無理』だったのだろう。
 サンジのそこは慎ましやかに襞を集めて、本体同様ゾロの暴挙にふるふると小さく震えている。
ゾロはくっと喉の奥で嗤いながら、ベッドに据え付けられた小さな抽斗へ空いた片手を伸ばした。
 視線をそらさぬまま盲探しでごそごそ中を漁り、やがて目的のものを取り出したゾロは、まっすぐ揃った前歯を使って器用にチューブのキャップを空ける。
 重ねた指の上にぐにーっとひねり出された中身は当然、普段のイトナミでゾロがサンジをひらくのに用いる潤滑剤だ。
 なすがまま、けれど強張ったサンジの指先にねっとりとした薬液を拾わせて、

「何にもつけねェでやったんじゃ、そら苦労するっての。自分でたっぷり塗りこんでみろ」
「ンなっ…あ、アホったれ!何でてめェの見てる前で」
「お前一人じゃ出来ねーんだろ?ちゃんと手伝ってやる」
「ふあ」

問答無用でぐっと蕾んだ中心へ押し込んでやる。

「ッ…!」

 ひゅっと息を飲んで衝撃に耐えたサンジは、次いで自らが追いやられた状況を悟っておろおろと声を紡いだ。

「…ば、ばかやめろ、ゾロッ」
「やめろだと?ぐいぐい入るぜ」
「〜〜〜〜〜!」

 泡を食ったようなガキっぽい彼の表情は、なんとも言えぬ優越感をゾロに与えた。
性質の悪い己のSッ気を自覚しながら、ゾロは言葉と共に彼の指を奥まで埋め込ませ、外に残されて所在なげに軽く握られた拳を手のひらで包み込んでやる。
 逃げられぬよう上から圧力をかけ、いつも自分がそうしているように小刻みな抜き差しを促す。
決して広いとは言えぬ部屋の中にくちゅ、くちゅっと濡れた音が響くのはいつものことだが、サンジにしてみれば堪らない屈辱だろう。
 けれど固く瞼を下ろした彼の象徴は萎えもせず、卑猥な蜜を垂らして悦んでいる。
カラダは正直、とは良く言ったものだとゾロはほくそ笑んだ。
 取り敢えず表面上での合意は確保…どの道サンジは、コトが終わればしこたま怒りまくるに違いないが。

(まーもう後にゃ退けねぇし)

 ゾロは(うし)とこっそり気合を入れなおした。
本番に至る本来の『準備』はこんなもんではまだまだ足りない。
 いつだって狭くてきつい部位。時間をかけて丹念に解して、指ではガマンできなくなるまでとろとろに蕩けさせて、ようやく快楽を共有できるようになるのだ。

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 (2006.02.08)

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