剣豪の受難 6 |
6 「イヤァ、自慢じゃねェが他人のチンポコこんな近くで見たのは初めてだぜ」 「怖ェ〜ぬらぬらしてきたぞ。ガマンしなくてもガマン汁ってか。ギャハハハハ」 「ナマイキにも結構使い込んでやがるなエロ剣士め」 「そういや触るのも初めてだな」 「しっかしムダにでけェな。何喰ったらこんなになんだ…って俺のメシか」 「う〜キモいったらありゃしねェ。さっさとイッちまえ遅漏」 「おースゲエ、まだでかくなりやがんのか」 「澄ました仏頂面でエロいことばっかり考えてやがんだろ、オイ」 「ナミさんビビちゃんをオカズにしやがったらオロスぞ〜」 「ところでなんで俺はヤロウのチンポコ一生懸命扱いてやってんだ…?」 酔っ払いの独り言はワケが解らないことこの上ない。 ワケが解らないことをブツブツ呟きながら、その手は確実にゾロの性感を高めるために動き続けていて。 サンジが扱くたびに、ゾロの手の握り飯が揺れる。相当アホな絵面だった。 傍目から見れば物凄く間抜けな状況であったが、ゾロは異様な興奮を覚えていた。 大胆に触れられた股間が疼いて胸の奥が熱い。熱くて、このままじゃ焼き切れちまう。 そんなゾロの思惑にも気づかず、サンジは面白いおもちゃで遊んでいるかのように露わになったゾロのペニスを上下に扱いていた。 多少ゴツかったが、それでも自分に比べれば細くて白くて長い器用な指先が、己のモノに絡みついている。ガマン汁まみれのカリ首を指の腹でくすぐられると、それだけで射精したくて溜まらない。 (…んで、コイツはこんなエロい事を俺に仕掛けてきやがんだ…ッ) ゾロはもう何がなんだか解らなくなってきていた。一体何が。俺が何をしたと言うのだ。 じっとゾロのペニスを観察しながら奉仕を続けるコックは、意識してはいないだろうが物凄くエロい顔をしていた。 というか、ゾロにはそう見えた。 「バ…ッ、テメェ、もうヤメやが…」 「んー…もう少し、か?」 ゾロの様子を伺うべく、サンジが怒張したペニスに顔を近づけた。敏感なサオに吐息がかかる。 その光景は、ゾロの目線からまさに口淫にしか見えなくて。 (据え膳) 据え膳かこれは。 唐突に頭に物凄い単語が閃いた。 突如として凶暴なほどの衝動がゾロを突き動かす。 取り敢えず手に載せられたままだった握り飯をばくっと始末すると、馬乗りでゾロに跨るサンジにいきなり頭突きを食らわせて吹っ飛ばした。 「…ッ痛ェ〜〜〜!何しやがるこのデコハゲ!」 へたりこんで真っ赤になった額を押さえるサンジを不自由な両手で押し倒すと、今度はゾロがその上に馬乗りになった。 「もういい」 「ア?まだイってねェじゃねーか。遠慮すんな、ココまで来たら発射するまで見届けなきゃ男が廃るってモンだ」 「テメェん中でイく」 「アァ?」 訝しげなコックに有無を言わさず口付ける。 「????」 イイ具合に酔ったサンジには、自分の身に何が起こったか理解できない。ただ、イキナリ息が苦しくなった、と思った。 (なんだコイツあと少しだってのに…っつーか) 俺ァもしかして、クソマリモと、チューしてんのか? 状況が飲み込めた途端、コックの意識がハッキリと覚醒した。 「うわおああおああ!」 動揺したサンジに思い切り良く蹴り飛ばされたゾロの体がガン!と柵にぶち当たった。 後頭部をしたたかにうちつける。 すぐさま起き上がりペッと口内に溜まった血液を吐き出しながらのしのしとサンジに近づくその姿は、まさに鬼神。 普段と一味違う鬼気迫る目つきに圧されて、不覚にも戦うコックさんは後ずさりしてしまう。 「まずその足を封じるべきだったぜ」 「なんだなんでいきなりそうなンだッ!テメェとうとう頭がおかしくなったのか!」 「アァ?おかしいのはテメェの方だろ」 「んだとォ?!」 「クソエロい面して…嬉しそうに他人のチンコ触りやがって!」 「ううう嬉しがってねェ!嬉しがってねェぞオイ!」 「煩ェ。あんなもん拝まされた俺の気持ちも考えろ」 「―――知るかァアホ!」 「取り敢えず突っ込ませろ。この際相手がテメェなのには目を瞑ってやる」 完全にキレていた。 剣豪の刀は良く斬れるが、実はそれ以上にキレやすいのがお年頃の青少年である。 ヨッパのサンジには未だにどうしてこうなったのか解らない。 解らないが、大人しくオカされてやるつもりは毛頭ない。当然両手をポケットに突っ込んだ特有のファイティングポーズを取って立ち向かう。 しばし睨み合い、次の瞬間飛び掛った。 と。 その拍子に、まだ中身の残ったバスケットがころんと横になった。それを視界入れたコックが「げげッ!」と慌てて指さす。 「ちょい待てオニギリが落ちた!」 「…待てるか!散々人を煽りやがってこのクソコック!」 「何だそりゃァどんな言いがかりだ?!」 「いいからテメェのケツに突っ込ませろつってんだ!ガマンできるか!」 「…いつまで寝惚けてやがるエロマリモ〜!」 揉み合って暴れる二人を尻目に、ころころころ、とバスケットから零れた握り飯が転がっていき、そのままあっさり見張り台から姿を消した。 「「あ」」 ぺしゃ、と小さな音が、哀れな握り飯の末路を伝え。 「………」 サンジがゆらりと立ち上がった。細くて長い右足がゆっくり垂直に持ち上がる。 「他のこたァまァ許してやる。だがな」 「………」 「…メシを粗末にしてんじゃねェ!… ドガッ!と左肩に絶妙のシュートを決められ、体が沈む反動で見張り台がミシリと嫌な音を立てた。 「ぐおッ…!」 肩に受けた衝撃で体が重く痺れる。 フラつく脳髄をなんとか持ち直して、殺す勢いで睨みつけた。 「テ、テメェ…」 一撃を加えたコックはフン、と鼻を鳴らしてネクタイを直しながら、 「曲がりなりにも怪我人だから、今夜はソレでカンベンしてやる」 「どこがカンベンしてるっつーんだコラァ!」 「カンベンしてなかったら、刀のないテメェなんざ今頃とっくにあの世行きだ」 もっともな意見だったので、口をへの字にして黙り込んだ。 「…ヤサシクしてやってるからってつけ上がったら、痛い目に合うぜ?」 言うなり来たときと同じように前触れもなくひらりと甲板へ飛び降りる。 見下ろしながら青筋立てて怒り狂うゾロを、ビシィ!と指さして使命感に燃えるサンジが言った。 「ちゃんと全部喰え!喰うまで寝るなよ!」 「見張りなんだから寝ねェよ!」 「どーだか。朝の仕込みまで寝腐れてたら、フルコースだぜOK?」 いつもの人を喰ったような、挑戦的な瞳が笑った。不覚にも、見惚れた。 クルリと向きを変え男部屋のハッチを開ける後姿を、今更引き止めることはしなかった。 そのかわり、もしかしたら自分は一生あのクソコックに振り回されるのかも知れねェ、などととんでもない事を思ったけれど。全く人生終わっている。 「…なんつうワケの解らねェ野郎だ。危うくホモになっちまう所だったじゃねェか」 もしもサンジがこの呟きを聞いていたら、恐らくゾロは今度こそ反行儀キックコースで夜空の輝く星と化していたことだろう。 溜息をひとつついて横になり、左肩の痛みとしつこく股間にじんじん上がってくる熱をやり過ごすことにした。 この際今夜の見張りは放棄することにする。なんかあるかもしれないが、まァどーにかなるだろう。この海賊船のクルーは皆、並じゃないのだ。 それにこの熱を鎮めるためには、このままムリヤリ寝てしまうしかない気がする。 じゃないと―――折角逃げ出してくれたクソコックを引き摺り戻して、それはもうスゴイ事をしてしまいそうだ。 武士は食わねど高楊枝。剣豪とて、時には辛抱も必要なのである。 取り合えず盛大に隆起した剥きだしの股間をどうやって仕舞うか、それが当面の問題だった。 |
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